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南川泰三の日記です


by minamikawa-taizo
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不死身なり「玉撞き屋の千代さん」

 拙著「玉撞き屋の千代さん」にようやく春がきた。遅すぎた春。出版という形で世に出て実に7年目になる来年の5月、東宝系の舞台となって甦る。発売当初、本屋に平積みされ、多少は話題になったものの、やがて、本屋から姿を消し出版社の在庫も廃棄処分になった。
 ある時、古書店で830円で売られているのを見つけ、哀れに思って買い取った。それから次に古書店で見つけた時は500いくらかで売られていた。今度は買わなかった。
「100円均一で売られるよりいいか」
と思った。
 そして、つい最近、大阪阿倍野のユーゴ書店で「玉撞き屋の千代さん」が書棚に並んでいるのを見て感激した。書店が在庫整理を怠って売れ残っているだけなのかと思ったが、この書店に限りそれは絶対にないと思った。
 発売当初、ユーゴ書店は3ヶ所に平積みし、手製のポスターを正面のウインドーに貼って華々しく売り出してくれたのだ。
 今も置いてくれている一冊を買い取ろうかどうしょうか迷った。書店に置かれた最後の一冊だとすればこれを買ったら、完全に書店から消えてしまうと思ったからだ。
 地方の図書館で偶然「玉撞き屋の千代さん」を見つけることがある。
「何でお前がこんな所にいるの?」
と思わず心の中で叫んでしまう。
 この地方に知り合いや友達がいたかなと思うが心当たりがない。見知らぬ誰かがこの図書館に購入希望を出してくれたのだろうか?
 手に取ると表紙の一部が傷んでいる。少し色あせてもいる。何人かは読んでくれているのだ。
 インターネットを検索したら、あちこちの図書館で「玉撞き屋の千代さん」は目の不自由な人向けの音声本になっているようだ。作者である僕に了解を求めて来たのは1ヶ所だけだ。一人でも多くの人が読んでくれるならそれでもいい。
「玉撞き屋の千代さん」を漫画の単行本として原画を描いて出版社に持ち込んだ漫画家もいた。「玉撞き屋の千代さん」ともうひとつの「グッバイ艶」の表紙を油絵にして贈ってくれた人もいた。
 大阪のラジオ局が一週間に渡って朗読劇風に放送し、NHKの深夜便が序章部分の朗読を放送した。
 漫画雑誌で連載漫画にするという企画が持ち上がったが実現しなかった。その他、映画化の話が二ヶ所。テレビドラマ化にいたっては10ヶ所以上の制作会社から話があったがことごとく断ち消えた。
 その理由がすべて知らされたわけじゃないが、「大阪ものは視聴率が取れない」とか「玉撞き屋というイメージが良くない」という話が伝わってきた。
「糞食らえ!」
と思った。
 東宝と舞台化契約をしたのが5年前。忘れかけていた頃に舞台化が実現することになった。出版当時86歳だった千代さんは92歳になった。昨年の正月に脳血栓で倒れたが
見事、生還した。不死身の千代さんだ。
 舞台は浜木綿子さん、赤井秀和さん、加藤茶さん、西川峰子さん、貴城けいさんと言った豪華キャストで初演は東京芸術座で5月9日より二週間に渡って上演される。そのあと日程は多少変わる可能性があるそうだが
5月28日 山梨県民会館
6月1日 浪切ホール(岸和田)
6月3・4日 神戸国際会館
6月8日 香川県民ホール
6月14日 長門(山口)
6月21・22日 名鉄ホール(名古屋)
6月24日 松本文化会館
で上演される予定で、さらに1~2ヶ所増える可能性があるという。
 この舞台化に合わせて「玉撞き屋の千代さん」が文庫本になって再び本屋の店頭に並ぶことになった。
わが母、千代も不死身だが拙著「玉撞き屋の千代さん」も不死身である。
by minamikawa-taizo | 2007-12-23 01:41