オペラ「アラベッラ」に思う /
2010年 10月 09日
「それはすごい」
となるのか
「まあまあじゃないの」
となるのかよく分からない。出演者も日本人と外国人の混合で、パンフレットを見る限りそうそうたるキャリアだが、これもよく分からない。分からないが主演のアラベッラを演じたミヒャエラ・カフネという女優さんは美しく、そりゃ美しい伯爵令嬢役だから美しくなければいけないのだが、彼女のソプラノはド素人の僕でも素晴らしいと思った。
この数年、オペラを観るチャンスが何度か、と言っても3回だが、客席にいると何だか自分が中世の貴族になったようで、心が一回り豊かになった気がする。(気がするだけ)
どうも「オペラ」と聞くだけで緊張してしまうが、お話そのものは実に単純なストーリーが多い気がする。歌謡サスペンス劇場みたいな複雑で込み入った話はオペラには不向きなんだろう。
今回の「アラベッラ」も博打に狂って破産寸前の伯爵が、美人の娘(アラベッラ)の玉の輿を願って起死回生をはかろうとする。アラベッラにはズデンカという妹がいるが、女の子は淑女に育てるのに金がかかるので、妹は男の子として育てられた。
美人の姉に言い寄る3人の男がいるがアラベッラはいずれも結婚する気になれない。もう一人、アラベッラに夢中の男マッティオが妹(正体がばれるまでは弟)のスデンカにアラベッラへのラブレターを託す。
スデンカはアラベッラがマッティオにつれなくするのをかわいそうに想い、自分がラブレターの返事を書くうちに、マッティオに恋をしてしまう。
そして、ついにアラベッラの前に田舎の貴族、マンドリカが現れプロポーズ。アラベッラも大金持ちのマンドリカが好きになり、二人はめでたく婚約することに。
ところがスデンカは姉、アラベッラの偽手紙でマッティオを誘い、暗闇で想いを遂げる(つまり出来てしまう)しかし、アラベッラが男を誘い込んだと誤解したマンドリカが婚約解消を申し入れるが、スデンカが
「実は自分は女でマッティオを誘ったのは私」
と告白して、ハッピーエンドに収まるというもの。
アラベッラとマンドリカの恋の語り合いは、日本で言えば万葉集の相聞歌のようで楽しい。
「しかし」
と僕は思う。このお話は美女のアラベッラと御曹司のマンドリカの恋物語をベースに、その恋を邪魔するキャラクターとして、男として育てられたスデンカの恋が盛り上げ役になっているのはつまらない。
僕ならスデンカを主役する。姉に言い寄る男を助けながら、いつしか自分の中の女に目覚めていくというスデンカのキャラは魅力的だ。
そう思ったらパンフを詳細に読むと、原作はスデンカが主役で、アラベッラはお飾りに過ぎなかったらしい。
「アラベッラ」の演出を手がけたフィリップ・アルローも後書きで
「これはスデンカが主役だ。タイトルもスデンカにしたかった」
とまで言っているが、その割に舞台でのスデンカの比重は小さい。
また博打で一文無しになり、ホテルで酒を注文しても
「支払いが貯まってるから」
と断られる状況なのに、その晩、アラベッラのために舞踏会が開催される等、思わず首を傾げたくなるシーンも。ドラマにこだわる僕なんか思わず
「オイ頼むよ」
と言いたくなる所もあったが、オペラってそういうディティールにはこだわらないのかもな。





