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南川泰三の日記です


by minamikawa-taizo
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新幹線で御一緒の黒ずくめのお仲間 /

大阪から帰りの新幹線で僕の席はABCのC。ABには恰幅のいい黒ずくめのその筋の方が二人。僕も黒ずくめなので、他のお客さんから見ると三人のその道の方と間違われるのではないかと不安になった。
 心なしか通路を通る人は目線をはずしているように見える。僕もなぜか通路側に身をよじって、お隣のお二人のお仲間ではないことをアピールするのだが、第三者にはどう見たって恰幅のいい黒ずくめの三人組にしか見えない。
 車掌が切符の点検に来た。ABのお二人は大股を開いて眠っている。車掌が
「もしよろしければ京都を過ぎても空いてましたらお移り下さってもいいですよ」
と前に空いている空席を指さした。
「スゴイ!さすがプロだ。この車掌は一目で僕がその道の人じゃないってことを見破ったんだ。同じような黒ずくめなのにどこが違うのだろう?」
と思った。
 それにしてもお二人のその道の方がたんに目を瞑っているだけなら、車掌のささやきは
丸聞こえだったに違いないのに、結構、根性のある車掌だ。
「すみません」
とお礼を言ったものの、前の席に移動する勇気が出ない。わざわざ席を替われば
「私はあなたたちを避けたいと思ってます」
という意思表示に他ならない。
「親父ィ!俺たちと一緒じゃ迷惑なんかぁ」
と凄まれそうだ。
 僕は身を硬直させてC席で耐えることにした。
 京都駅でまたまた人相の悪い男が二人乗ってきた。男たちは僕の前に来ると、突然、懐からピストルを取り出し乱射。僕も隣の黒服も一瞬のうちに血まみれになり…なんてことを想像して、思わず腰を浮かしかけたが二人の男は何もなく僕の前を通過して隣の車両に消えた。
 僕は学生時代に東映のヤクザ映画のエキストラに応募したことがある。応募者を一列に並ばせて助監督が一人ずつチェックしていくのだが、僕の前で立ち止まり
「あんたダメだ」
と言われ、僕一人だけはねられた。助監督は申し訳なさそうに
「すいませんねえ。ヤクザの集団を撮るので芸術家はいらないんですよ」
と言った。
その他、大勢のヤクザ役でさえ不採用になった僕は、生涯、この道にだけは入るまいと思った。
 トイレの帰りに鏡を見て納得した。同じ黒ずくめでも他の二人にあって僕にないものがあった。金の鎖と、派手な指輪だ。
 それに面構えに迫力がなく、ただの人のいいオッサンにしか見えない。
 席に戻るや否や僕の携帯メールが鳴った。隣の男がパカッと目を覚まし、僕を睨み付けた。
「す、すみません」
そう言って僕は再びトイレに向かった。
 
by minamikawa-taizo | 2011-05-02 03:27