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南川泰三の日記です


by minamikawa-taizo
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今夜の脳細胞は虫の息

 
 蟻の一種に「ハキリアリ」というのがいる。東南アジア等のジャングルに棲んでいる。
字の通りアカシアの葉を器用に切り取って、自分の身体の数倍はある葉っぱを巣に運び入れる。数十メートルに渡って切り取った葉を運んでいくハキリアリの映像はどこかで観た人もいるだろう。
 葉っぱを巣に運んだあとのハキリアリの生態を知る人は少ない。彼らは運び込んだ葉っぱを食べているわけではない。その葉っぱを貯蔵庫に入れ、唾液を混ぜて菌糸植物を育て、それを食糧にしているのだ。
 つまり、彼等は農耕によって暮らしていると言ってもいい。巣穴を観察していると時々数匹の蟻が一匹の蟻を担いで、どこかに運んでいく。運ばれている蟻は死体の時もあればまだ生きている時もある。
 その後を追って見ると、彼等は苦労して細長い葉っぱの上まで担ぎ上げ、その上から担いできた蟻を投げ降ろしている。
 その下には無数の蟻の死骸が山のようになっている。ハキリアリたちの墓場だ。死体の山を見るとまだ手足を動かしている蟻もいる。
 なんと彼等は死んだ仲間や、働けなくなった仲間を墓場に捨てているのだ。昭和の初期まで残っていた日本の姥捨て山、貧困のために年寄りを山に捨てる習慣を思い起こさせる光景だ。
 そして、蟻の墓場はやがて朽ちて、土の養分となり、そこからアカシアの芽が生えてくる。実に見事な輪廻だ。
 大抵の場合、僕らは葉っぱを器用に切り取って、自分の数倍もある収穫物を長い行列をつくってエッチラオッチラ運んでいくハキリアリを観るぐらいで、それ以上の生態を知ることはない。
 カマキリの雌は交尾したあと、雄を食べてしまうのもよく知られている。そのため男を食い物にする女を「カマキリのような女」と表現する。
 しかし、これだってある学者がカマキリの雌が交尾した後、雄を引き離して雌のカマキリをくっつけたら、その雌カマキリが食われてしまったという。
 さらに雌カマキリじゃなく、自分の指を近づけたらその指に噛みついて来たというではないか。
 つまりカマキリの雌は雄を喰うのではなく、子孫を残す体力をつけるために身近にあるものを食べているにすぎない。
 たまたま二種類の昆虫の生態を例にしたが、僕はこうした小さな知識の発見がある度に自分の無知を哀しく思う。
 たかが蟻やカマキリの生態を知らなかったということじゃなく、日常の人間関係の中でも僕は知らないための偏見や誤解、好き嫌いをしてはいないか?
もちろん、何もかも知ることは不可能だが知ろうとする努力をすべきだと思った。

 と、ここまで書いて僕の筆は止まった。蟻とカマキリの知らなかった生態から、直接人間関係に結びつけるのは無理があるかも知れない。無理を通せば道理が引っ込む。本当は蟻やカマキリの話から、人間関係の小さな発見につなげ、そこからもっと人間を知る努力をすべきだという話をするべきだ。
 ところが、何も浮かんでこない。頭が真っ白。 結論は同じだが説得力に欠ける。しかも言わんとすることが当たり前過ぎる。
「 日常の人間関係の中でも僕は知らないための偏見や誤解、好き嫌いをしてはいないか?
もちろん、何もかも知ることは不可能だが知ろうとする努力をすべきだと思った。」
なんと欺瞞に満ちた言い草。自分を思いきりいい子にしている。
 イヤ待てよ。こんなことを書くと自虐的だと思われはしないか?思われてもいいじゃないか。それもお前の一面だ。
 どうやら人を知る前に自分自身をもっと知るべきなのかもしれない。支離滅裂、堂々巡り、今夜の僕は絶不調。脳細胞は虫の息だ。
by minamikawa-taizo | 2006-01-11 23:25