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南川泰三の日記です


by minamikawa-taizo
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大阪の阿倍野にある「阿部晴明神社」

 拙著「玉撞き屋の千代さん」(集英社)の連載漫画化の話が進んでいる。それとは別にこの小説をモチーフにして、サスペンスドラマ企画も同時進行している。
 そりゃ結構なことで商売繁盛の自慢話かよと言われそうだが、どちらも最終的にNGになる可能性も大いにある。
僕のような仕事は泡のごとく現れては消えてしまう仕事は日常茶飯だ。
 それでもたとえ泡に終わろうとも、消えるまでは懸命の努力をする。そこで目下、サスペンスドラマの素材探しをしているのだが、思わぬ発見をした。
 「玉撞き屋の千代さん」は大阪でビリヤード場を70年近くもやっている母親の波乱に満ちた人生を描いた。
 サスペンスドラマの方はこの母親とも、人生とも全く関係なく、彼女が経営している古い玉突き屋を舞台に全くオリジナルで考えている。
 千代さんが経営する玉突き屋の店名は「ビリヤード保名倶楽部」という。子供の頃、何故、町名でも苗字でもない「保名」(やすな)という店名にしたのか疑問に思ったことがあった。
 母親は「阿部晴明のお父さんの名前や」とだけ教えてくれた。
「何で阿部晴明のお父さんの名前を玉突き屋の屋号にしたんや?」
と思ったもののそれ以上聞かなかった。
 店から歩いて5分ほどの所に阿部晴明神社というのがあるのだが、当時は今ほど阿部晴明は有名人ではなかったので「あ、そう」と簡単に納得し、小説を書く時も調べなかった。
 今回、サスペンスドラマを企画するにあたって、大阪の阿部晴明神社は何らかの形で使えるかも知れないと、とりあえずネットで検索してみたら面白いことが分かった。
 阿倍晴明ブームの時に騒がれた晴明神社は京都にある。しかし、大阪市阿倍野区にある阿倍晴明神社は阿倍晴明の生誕地として、知る人ぞ知る存在で、神社の縁起「摂州東成郡阿倍権現縁記」によれば
『安倍晴明公は古代豪族阿部氏の出で、伝説では平安時代の天慶7年(944)3月辰の 刻に阿倍野に生誕し、幼名は安倍童子、聡明で学問を好み、京都に上り陰陽家賀茂忠行 とその子息保憲に師事し、陰陽道の術を修め、天文博士、陰陽頭(オンミョウノカミ)、 播磨守等を歴任し、従四位上に叙せられた。天文を見てあらゆる事を占い、大江山の鬼 退治を指導した』
と言うようなことが書かれている。
 また「今昔物語」等には
「今から一千年の昔、阿倍野に安倍保名という人がいた。ある時、家来と和泉の信太明神 にお参りし、信田の森で遊んだ処、狩に追われた白狐が逃げ込み、これを隠まってやっ た。その後、白狐は恩返しの為に、女人になって保名の所へ来た。女人は葛之葉と名乗 り、二人は結婚して安倍晴明神社の辺りに住んだ。
  やがて子供が生まれ安倍童子と名付けたが、この子が幼少の頃に、母の影に狐の姿を 見た。童子が驚いたのでこれを恥じた葛之葉は、障子に
 「恋しくば尋ね来てみよ 和泉なる信田の森の 恨み葛之葉」
という歌を残して、信田の森に帰った。童子が泣くので、保名が童子を連れて信田の森 に行くと、葛之葉が現れて童子に知恵の玉を授けた」
と言うような説話が残っており、歌舞伎や浄瑠璃でも上演されている。
しかも、この話は芸事の好きな人にはよく知られているとかで、またまた己の無知を恥じる結果となった。
 永年自分が生まれ育った玉突き屋の屋号である「保名」にそれほどの歴史と伝説があったことを、この歳になるまで知らなかったのだ。
しかも、さらに興味深いのは今も阿倍晴明神社には不思議な現象が起こると言うのだ。
その不思議な現象とは、北畠という所にある阿倍野神社から王子の晴明神社の方向に特殊な結界「異界の入り口」があると言われ、その辺りを歩くと、通い慣れた道がいつの間にか見知らぬ光景に変わっていたり、人気は全くないのに視線を感じたりするというのだ。
何だかサスペンスドラマにピッタリの話ではないか。「阿倍野うらみ蔦の葉殺人事件」などと言うタイトルが浮かんでくる。
 しかし、注意すべきはこうした題材はともすれば陳腐な伝説物ドラマに終わってしまう可能性がある。何とかここから人間ドラマをからめた厚みのあるドラマが考えられないものなのか?
 もし、うまくサスペンスドラマとして実現すれば阿部晴明様の御利益だし、NGになれば永い間、知らずにいた僕への阿部晴明様の祟りと思うことにしよう。
 阿部晴明様。今度、帰阪した時は必ずお参りしますから、どうか祟らないで!
 
by minamikawa-taizo | 2006-01-19 01:52