泰三の笑えない落語「責任転嫁物」
2006年 04月 01日
玉野市は僕の尊敬する無頼派作家、堤玲子さんの住むところでございますが、今回は堤さんのお話ではございません。してどんなお話かっていうとォ~
何とか活力を取り戻したいと願う街の人たちの願いと焦りが生んだとも言える出来事であります。と申しますのは
四国と結ぶフェリーが24時間眠らずに運航する港。宇野港。この宇野港に三年前、欧風レストラン「クッチーナ・デ・ウーノ」なるオシャレなレストランが華々しくオープンしたんでありますな。
この食べる前に舌を噛みそうな「クッチーナ・デ・ウーノ」はあのカリスマ料理人、平野寿将なる人物が総合プロデューサーを勤めるとあって、地元のマスコミも大々的に取り上げ、オープン当初から大盛況でありました。
クッチーナはおよそ100坪の店舗に寿司・焼肉・ピザ・パエリアなどの屋台店が集まり料理はすべてカリスマ料理人によるオリジナル。客は自分の好きな料理を選んで、中央のテーブル席で食べて戴くという仕組み。
これが開業3ヶ月で2万5千人を集客、一日200万円以上の売り上げを続けたってんですから、建物を含め1億1千万円の税金が投入された町おこし事業は大成功したかにみえたのであります。
ところが僅か一年で、クッチーナ・デ・ウーノは閉店に追い込まれたんですな。その責任を巡って町と観光協会・カリスマ料理人、三者三様、お決まりの責任転嫁劇があり、僕はたまたまそのドキュメンタリーに関わったというわけ。
一体、玉野市の町おこし計画に何が起こったのか?
そもそも町おこしのためカリスマ料理人の平野さんを総合プロデューサーにして、この屋台村の計画がスタートしたものの、10店舗が入る予定が、オープン前に集まったのは4店舗。平野さんは500万円の契約金で総合プロデュースと自ら豆腐料理の店を出店することにし、計5つの屋台でスタートしたんでありますな。
ところが責任の所在がはっきりしないまま、屋台村は見切り発車、しかも予想外の大盛況にどうしていいか分からない。これまで客商売なんぞしたことがない観光協会はギブアップ。オープン10日目に売り上げの管理、利益の分配など一切の権利を平野さんが率いるヒサマプロジェクトに任せてしまったんでありますな。
ところが、ところがであります。月に2000万円近い売り上げが続いたのに1店舗あたり20万円ほどの分配しかなかったため大騒ぎ。
「経費、材料仕入れを引くと純利益はこんなもの」
という平野さん側と
「いくらなんでも2000万円の売り上げで、僅か20万円の分配はないんじゃない の? 」
次第にテナントの平野さんに対する不信感が高まって行ったんですなぁ。
テナントがやる気をなくせば店は一気に衰退。
あれほどの盛況を誇った屋台村「クッチーナ」の人気は急激にかげりを見せ始め、閑古鳥が鳴き始めた。
こうなると後はお定まりのコース。市と観光協会、平野さんの三つどもえの争いとなっりまして、元々、レストラン・クッチーナは地元の観光協会が市から5600万円の補助を受けてスタートしたんですが、市はたんに観光協会に金を貸しただけといい、観光協会は
「ウチは家主で平野さんに一括してお貸ししているだけ。それで平野さんが家賃を払 わないので、強制的に閉めさせてもらった」
といい、平野氏だって負けちゃいない。
「ウチは市から頼まれて店舗とプロデュースを引き受けただけで、経営責任はない」
と反撃し、まさに芥川龍之介の「藪の中」状態。
いちいち三者の言い分を紹介するのはバカバカしいからやめるが、近頃、町おこしや、村おこし等と言っている地方では似たような話がゴロゴロしている
その後のクッチーナの様子を聞いたら、未だに係争中なんだそうだ。しかし、この事件、
いわゆる悪党面は一人もいない。みんな善良な一市民、人のよさそうな顔ばかりで、お互いに責任をなすりつけあっている。
泰三のブログのフロク「悪魔のひとこと事典」
「責任とは 鼻くそ同様知らないうちになすり付けられるから御用心」





