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南川泰三の日記です


by minamikawa-taizo
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誰も知らない殺人事件

殺人で死刑判決を下された元暴力団員、後藤良次(48)が警察も感知していない3件の殺人を告白し、その主犯が逮捕されたというニュースに衝撃を受けた。殺された3人は同じ暴力団関係者ではなく、後藤が「先生」と読んでいた主犯の容疑者が金儲けのために行った残酷な殺人で、被害者はいずれも普通の市民だった。
 つまり、死刑囚の後藤が告白していなければ、この主犯の先生はのうのうと生き続け、殺された被害者は年間10万人はいると言われる行方不明者の仲間入りをしたままか、自殺、事故で片づけられていたことになる。
 後藤が口に蓋をして死刑になったら、少なくともこの世に3件の殺人事件は永久に存在しなくなった可能性がある。
 インドのタージ・マハールでガイドとはぐれてしまい、王宮の周囲をデイレクターとカメラマンと僕でガイドを捜し回った。華やかな王宮内と違い周囲は殺風景で、人影がなく、ゴミだらけの荒れ地となっている。指定された出口を間違えたのかと思い別の出口に向かうために、ゴミを漁る野生の猿などを見ながら、王宮の塀に沿って歩いた。
 結局、自力でロケバスの待機場所に戻ってガイドとも落ち会えたが、後で聞くとタージ・マハールの周囲は危険地帯で、麻薬の取引に使用されたり、年に数回、他殺体が発見される場所だと言うではないか。
 僕らは運良く他殺体にならずにすんだが、もし、他殺体になっていたら犯人は永久に分からず、捨てられた場所によっては発見されなかったかも知れない。
「テレビクルー、インドアグラで行方不明」
てなことになっていたかも。
 思えば雪山で事故死とか、火事で焼死、水害で死亡などという記事はそれほど珍しいものではないが、これらの犠牲者の内、数百件に一つ、数千件に一つぐらいは殺人事件が隠れているのではないか?
 岸壁の上に立つ友人や、家族、恋人、ちょんと後ろを押せば千尋の谷に真っ逆さま。寸前まで殺す気がなくとも、一瞬、魔が差して
「こいつさえ死んでくれれば課長の椅子が」「こいつさえ死んでくれれば保険金が」がなどと悪魔の誘惑に耳を貸してしまう輩が絶対にいないなんて誰が言えるのか?
 隣で発生した火災が燃え移って、自宅が炎に包まれる。年老いた父親を助け出そうとするが、ふと悪魔の囁きを聞いてしまう。
「このまま父親が死ねば介護の苦しみから解放される」
こうしたケースの場合、まず殺人が公になることはない。良心の呵責に耐えかねて
「火事の最中、父親を見殺しにしました」
と告白しても、介護を要する父親を確実に救出出来たことを立証するのは難しい。
 ロシアも元諜報員が放射性の毒物で殺されたが、今や殺人の手段は著しく進歩し、針でチクンと突いただけで、一週間後に極ありふれた心臓発作で死なせることが可能だと言うではないか。
 こうなったら名探偵シャーロック・ホームズも明智小五郎も、殺されるべき人間がほとんど死んだ後に解決する金田一耕助もお手上げだ。
 ドラマを書くために殺人のトリックを考えたことがあったが、完全犯罪は可能だ。可能だが完全であればあるほどドラマとしては詰まらなくなる。
今日、娘と話していたら昨年、彼女がが画用紙一杯に蛇の絵を描いて地区の絵画展に出品されたという話題になった。その時、その絵のタイトルが「にじいろのへび」だったのを思い出した。
「虹色の蛇か……」
何だかこのタイトルでサスペンスが書ける気がした。
「泰さんにそのタイトルを10円で売ってくれないか?」
「ダメ!」
「100円!」
「ダメ!100万円!」
最高傑作の殺人小説は当面書けそうにない。
by minamikawa-taizo | 2007-01-20 02:16