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南川泰三の日記です


by minamikawa-taizo
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オシャレな香りドロボウ

 正倉院の宝物の中に「蘭奢待(ランジャタイ)」と呼ばれる香木がある。長さ156センチ、重さ11,6キロの大きな香木で、室町幕府の八代将軍、足利義政と織田信長、明治天皇が削り取って香りを楽しんだという記録が残っている。
 ここまでは問題ない。正倉院の宝物は時の最高権力者しか自由に出来なかったから、上記の権力者が削り取るのはOKだ。
 しかし、この蘭奢待にはなんと38ヶ所の削り取った跡があるというのだ。こっそり削りとって香りを楽しんだヤツがいるということだ。
 たかが香木を少し削り取ったぐらいいいじゃないかと思う人がいるかも知れないが、香木を甘く見てはいけない。
 以前、この蘭奢待のルーツであるベトナムに世界最高級の香木を探しにいく旅を企画したが、匂いは絵にならないという阿呆な理屈で却下された。
 その時、日本の香料店を取材したが、ほんの十数センチの香木が数千万円の値をつけ、確か一億円を超える香木もあった。
 日本には香道を伝える家元が二軒あって、その内の一つの家元をお訪ねしたら、わずか5センチほどの香木が家宝となっていた。
 それほどに香木は貴重品で、価値が高く希少なのだ。ましてや正倉院の宝物である蘭奢待を数センチ削り取っただけでも、おそらく数千万円を盗まれたのと同じ事になるのだが36ヶ所も削りとられてもほとんど話題にさえならない。
 その原因の一つは千年以上たつ蘭奢待を何時、誰が削り取ったのか前述の三人の権力者以外は不明で、犯人を追跡しようもないことだ。
 もし仮に最後に削り取ったのがここ数年の出来事だとしたら、これは明らかな犯罪で、蘭奢待を数センチ削り取って転売すれば億近い稼ぎになっていたかも知れない。
「それがどうしたの?」
と言われそうだが、1億円の泥棒となると立派な犯罪だが、香りドロボウと考えるとどこかオシャレなイメージが湧いてくるではないか。
 一生に一度でいいから蘭奢待の香りを自分のものにしたいと考えた男がいて、綿密な計画を立て、かなりの資金と時間を費やして、見事、正倉院の蘭奢待を数センチ削り取ることに成功し、毎夜、盗み出した蘭奢待を取り出しては至福の刻を過ごすなんてストーリーが浮かんでくる。
 以前、香りの研究者にお会いしたことがあって、人間の病気にもそれぞれ特有の匂いがあることを知った。その先生は「肺ガン」の匂いを検知する機械を開発中とかで、それが開発されると、機械を近づけただけで「肺ガン」かどうかが分かるようになるらしい。
 その時は「本当かいな?」と半信半疑だったが、その後、テレビで肺ガンの匂いを探知する犬が紹介され、病気と匂いの研究が急速に進んでいることを知った。
 しかも近々香水作りをテーマにした映画が封切られるというし、この際、再び「香り」をテーマにしたスペシャル企画が出来ないかと思ったが、またもや「香りは絵にならない」と却下されるのだろうか?近頃のテレビはそれでなくとも充分に胡散臭いのだが……
by minamikawa-taizo | 2007-01-28 03:49