能登道子さんに会った
2008年 08月 01日
出かける前にあがた森魚さんの編曲による「むらさきの山」だけをとりあえず聞いて飛び出した。能登道子さんの「むらさきの山」に比べればかなり軽快な感じになっているがそれはそれであがたさんらしくて感激した。
15時30分から19時30分まで、日本脚本アーカイブズ倶楽部主催の演劇塾の講師で久しぶりに役者を目指す若い塾生たちと充実した時間を共有出来た。
能登道子さんに会ったのは午後8時。北千住丸井の9階にある洋食屋で、彼女はサラダ、ビーフシチューでビールを飲み、僕はハンバーグとエビフライのセットでウーロン茶を飲んだ。
能登さんは今、食堂のおばさんをやっていてこの日は定休日だった。大変、流行っている店で、行列まで出来るほどなんだそうだ。なんでそんなに流行っているのかと思ったら流行るわけだよ。昼は定食500円均一ですべて手作り、添加物などややこしいものは一切使わず、まさにお袋の味で勝負している。
しかも、行列まで出来るほどなのに全く儲かっていない。そりゃそうだわさ。ボリュームたっぷりの定食のみを500円で出していたんじゃ儲かるわけがない。
「ともかく500円定食の店を作りたいと思って始めたから絶対に値上げをする気ないわ」 その心意気が実に素晴らしい。彼女のレコードが再販されても二度と歌手の世界に復帰しようとしなかった能登道子の頑固さと、自分の生き方へのこだわりは健在だった。
ほとんど儲けにもならないのに朝から夜中まで働く能登道子。
「お互いに金儲けは下手だなぁ」
と言ったら、目を細めて大きく頷いていた。
意外なことを聞いた。僕が昔から大好きだった「むらさきの山」の
「♪走ってゆく 父さんと父さんの恋人 走ってゆく母さんと母さんの恋人~」
というフレーズだけは彼女の詞ではないんだそうだ。
「道に落ちてた紙切れに書かれた詞の一部だったの。住所が書いてあったので連絡したんだけど返事がなかった。他のフレーズは全く覚えていないけど、このフレーズを見たときにビビッと来たの」
正確に言えば盗作ということになるのかも知れない。しかし、今となっては問題ではない。能登道子が道ばたで紙切れを拾わなかったら、永久に消えていたかも知れない一節なのだ。
「♪走ってゆく 父さんと父さんの恋人 走ってゆく母さんと母さんの恋人~」
一体、どこの誰がこんなスゴイ詞を書いたのだろうか?
「♪走ってゆく 父さんと父さんの恋人 走ってゆく母さんと母さんの恋人~」
今尚、この詞を口ずさむだけで、胸が熱くなる。